9)看護師不足とDPC方式

  皆さんは、看護師不足の報道を目にされたことがあるでしょう。日本では病院に対して支払われる入院に関する診療報酬は、病床の患者数に対する看護師の配置で基本的に増減します。すなわち看護師の陣容が、医療機関の質を反映する視標として診療報酬に反映されています。このため、経営の視点で急性期の患者を診療する一般病床を維持するために医療機関の間で看護師確保の争奪合戦が繰り広げられることになりました。

  さて、一般病床は包括方式と出来高方式の2種類の診療報酬算定制度が存在しています。現在一般病床の半数以上が包括方式の病床になっています。主に、急性期の患者を診療する主要病院は、包括方式(DPC方式)すなわち病名・病状と診療行為の組み合わせによって一日あたりの入院基本料が決定される方式を採用しています。当初82の高次医療機関である特定機能病院から導入が開始され、徐々に医療機関数が増えています。しかし、出来高で収入を得ていた病院がDPCの方式へ移行すると収入が減る可能性があるので、医療機関ごとに差額が補償されるように調整係数を診療報酬点数に掛けることにより調整しています。

  何故国は、そもそも包括方式を導入したのでしょうか。出来高方式による過常診療の行き過ぎを是正し、医療資源の配分の適正化と診療行為の透明化を目指したのです。そこで、DPC方式を採用し、病名・病状と診療行為の組み合わせで定額が支払われるように新たな診療報酬制度を導入したのです。一方、包括方式では、手間のかかる重症患者を受け入れると経営にマイナスになるという理由で重症患者の忌避や粗悪診療のまん延が懸念されています。このため、DPC導入病院の診療の質を確保するために、調整係数以外に機能評価係数も診療報酬に反映されるように設計されました。すなわち、紹介患者の受け入れ率や、看護師の配置などを基本に機能評価係数が算定されてきました。すなわち医療機関の陣容と診療実績あるいは医療機関の役割が評価されてきたのです。このために最初に記載した看護師の争奪が発生したのです。一方、各病院には診療連繋室が設置され、地域の医療機関と連繋し紹介患者の受け入れ率を増加するように院内組織が、改編されたのです。

  DPC採用病床数が50%を超えるまでになり、DPC方式はすでに日本の医療保険制度に定着したといってよいでしょう。そこで、行政は導入当初の調整係数や機能係数の見直しを論議しています。DPC導入のインセンティブが主な算定根拠であった調整係数については、将来の廃止を目指して協議され、2018年に機能係数へ移行する予定です。一方、機能係数の中では看護職の陣容や紹介率が重視されてきましたが、診療実績や医療の質に重点が置かれた機能評価係数に見直しされることになります。本来評価されるべき指標に重点が置かれることは、本来あるべき方向性として歓迎すべきでしょう。一方、DPC方式から脱退してもよい制度にもなっています。国の方針に追随していけない医療機関は、脱落することになるわけです。今後2018年に向かって医療機関がどのように姿を変えていくのか民間保険会社も注視しておくべきでしょう。