4)世界の公的健康保険とHTA

  各国の公的健康保険は、給付サービスの内容、給付の対象、財政基盤など様々です。この分野の専門書では、主に英国型、フランス型、ドイツ型、米国型の特徴が紹介されていることが多いようです。またアジアではシンガポールが特異な健康保険制度を有しているため、よく紹介されています。各国の制度の詳細を論じるのは、ここでは割愛いたしますが、逆に各国共通の公的健康保険における問題として取り上げられているのが、医療技術の進歩と公的健康保険との折り合いの問題です。医療技術の進歩は、少数の患者を対象にする個別化医療を推し進め、患者の多様なニーズに対応いてきていますが、反面高額な医療を出現させることになっています。高額な医療技術が押し寄せる中、どのように新技術を公的健康保険に吸収し、公的健康保険の給付として国民に提供していけるのかが大きな問題になってきています。2012年10月に横浜で開催された第50回日本癌治療学会でも、高額医療の問題が取り上げられ各国の取組みが紹介されていました。

  この問題への取組みになるキーワードがHTAです。Health Technology Assessmentの略ですが、公的健康保険の適用可否を判断するための新技術の評価法です。何らかの評価基準を導入し、公的健康保険の適用可否を判断するのですが、多くの場合新技術と従来技術の効果を比較し、上乗せ効果(優越性)を掛かる費用と比較するという手法です。具体的な評価法は専門的になりますので専門書に譲りますが、日本国内でも2012年からようやく新医療技術(新薬を含む)の保険適用について費用対効果の検証をすることが検討され始めました。まず始めに検討の俎上の対象になるのが粒子線治療です。1件の治療が約300万円必要です。現在先進医療で患者負担となっていますので、医療財政に影響を与えていませんが、保険適用となれば医療財政への影響は無視できません。

  いずれにせよ、各国共通で高額医療が問題になり、HTAのよい手法が検討されています。長い間日本では、医学会や患者の要望があれば新技術について保険適用してきましたが、HTAに基づく保険適用が本格化することになれば、自由診療や混合診療にインパクトを当てるでしょう。保険適用にならなかった新技術は自費診療の世界に投入されるしかないからです。勿論、その先に民間保険のビジネス展開もありえると考えています。