22)医薬分業と調剤問題

昨今、調剤薬局を巡る問題が政策的に議論されています。

医薬分業の見直しにまで議論がおよび、「門内薬局の創設」と「かかりつけ薬局の推進」で決着がついたという様相です。

しかし、背景には様々な問題を理解しなくてはなりません。

  1. 薬価基準の決め方、薬価という公定価格の問題
  2. 薬剤の物流を含む薬価差益と調剤費用の問題
  3. 医薬分業推進の根拠と批判
  4. 諸外国の院外薬局と日本の格差

などのポイントです。

薬価や薬価差益の構造は複雑で専門的な様々な問題が議論されています。

また巨大な調剤薬局を巡り調剤費用の拡大に対しては批判が厳しくなっています。非営利であるべき公的健康保険制度に調剤薬局や薬の卸が民営として存在するという歪な状況の課題が露見し、批判は今後も大きくなるでしょう。そもそも、消費者への薬剤販売価格が公定価格である以上、調剤薬局の企業努力は消費者に還元されないという根本的矛盾をかかえたまま医薬分業を推進していることが問題です。医薬分業見直し議論は、薬剤師業界、調剤薬局業界および厚生労働省にとって脅威に映りました。国民にとっては医薬分業のメリットが曖昧なために、国民のメリットより院外薬局のメリットでしかないと思われている点です。医薬分業を推進した厚生労働省にも批判の声が届いたわけですが、医薬分業を推進することが建前の厚生労働省は規制改革会議の批判に対し、門内薬局の創設と引き換えに医薬分業推進の実利を堅持しました。

すなわち、これまで通り医薬分業を推進することが承認され、加えてかかりつけ薬局制度を実施することになったことです。決着を見るために国民に対しては、大規模なかかりつけ薬局のメリット啓蒙報道(残薬解消、認知症患者対応、健康情報拠点など)が、発信されました。かかりつけ薬局制度は、今後拡大せざるをえないセルフメディケーション(スイッチOTC化と保険免責導入による処方薬の保険適用外化)の受け皿にする構想の一環です。いよいよ公的健康保険から薬剤費の分離政策が本格化する予兆のようです。

以下に、簡単な図で課題を説明しておきます。