2)今後の先進医療

  公的に認められた混合診療としては特定療養費制度と高度先進医療制度の時代から、保険外併用療養費制度と評価療養・選定療養の制度へ変更されて現在に至っています。これまでの制度変更の詳細は割愛しますが、患者の生死関係する部分としては評価療養の一類型である先進医療について注視しておかなくてはなりません。先進医療の解説も厚生労働省のHPを見ていただくとわかりますので、ここでは割愛いたします。さて、先進医療も、高度先進医療単独の時代、高度先進医療と先進医療(旧)の併存していた期間、先進医療へ統合された時代と変化してきました。また先進医療は、第2項先進医療と第3項先進医療(高度医療)の併存から先進医療Aと先進医療Bとなって現在に至っています。高度で先進的な医療技術を対象に保険適用の可否を確認する制度が先進医療でしたので、新しい検査や治療技術の評価が目的の制度でしたが、2012年10月の制度改定により稀少疾患の治療薬の医師主導治験を支援する制度として先進医療Bが位置づけられました。これに従って、当初の制度の存続意義が変質しています。

  先進医療は、ご存知のとおり公的管理下における混合診療ですが、治験の側面も有するようになり制度は混沌としてきています。今後も制度の意義や役割は大きく変化していくと推測されます。目下の行政の問題は、粒子線治療(重粒子線治療を含む)の評価です。先進医療を保険適用する基準は、現在存在していますが批判があるように基準は曖昧です。超高額医療である粒子線を保険適用するかどうかは、今後の先進医療の動向を占う試金石になっています。高度先進医療から先進医療へ制度変更になった契機である尾辻厚生労働大臣と鴻池行政改革担当大臣の基本合意がされた当時における日本医師会の主張は、先進医療は保険適用の審査をすることが前提で、できるだけ速やかに全医療技術について保険適用を図るべきだというものでした。しかし、粒子線治療を保険適用するとますます医療財政は逼迫します。したがって、粒子線治療を①医療財政にかかわらず保険適用する、②保険適用せずに先進医療から外す、③先進医療という制度を変更し、保険適用は認めないかわりに混合診療として認める、という3者が考えられます。実は、2014年の診療報酬大改定の際に、いずれかの方針が確認されると予想されています。

  今後、粒子線のような高額医療について粒子線同様に、公的保険と先進医療の中にどのように位置づけるのか、今後の先進医療の制度についての議論について注視すべきでしょう。当研究所では、保険適用しないという評価がされても先進医療として粒子線については混合診療を認める選択肢が示されるのではないかと推測しています。

以上の解説を記載しておりますが、平成27年の通常国会で新たに患者申出療養が審議されます。先進医療と関連していますので、医療特区における先進医療の特例と共に別途解説いたします。