19)患者申出療養と医療特区

持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正について立法府で審議されています(2015年4月現在)。法案の中には、患者申出療養という制度が含まれています。成立すれば、2016年4月から施行される予定です。
安倍政権になって、混合診療拡大へ大きく舵が切られています。これに関する中心2制度は、患者申出療養と医療戦略特区における保険外併用療養(先進医療が使用される場合もあります)の特例になります。両者は、類似する制度ですが、当然異なる制度であり、何が目的で、それぞれどのような制度か理解しなければなりません。混合診療拡大については様々な議論もあり、批判はありますが、それぞれ導入に向けた推進議論の主役はドラッグラグ解消です。患者申出療養では、オーファンドラッグに医師主導治験の推進と未承認薬のコンパッショネートユースです。一方、医療戦略特区は、英米独仏加豪の6カ国で承認されれている薬剤を先進医療とは別に使用できるようにするものです。一見すると何が異なるのかよくわかりません。患者申出療養を提供する医療機関は、臨床研究中核病院および特定機能病院(以下、申出機関)であり、医療戦略特区の特例の対象医療機関(特区機関)は、臨床研究中核病院等と同水準の国際医療機関となっていますが、一体、両者の何が異なるのでしょうか。
 

 

患者申出療養(保険外併用療養費との併用が可能な療養費の1類型)

医療戦略特区(先進医療の特例)

目的

高度の医療技術の使用要望へ応える

次世代のより良質な医療の提供を可能にする

国内未承認医薬品等、国内承認済み医薬品等の適応外使用を迅速に保険外併用療養費として使用できる仕組み

医療水準の高い国で承認されている医薬品等について、国内未承認の医薬品等の保険外併用の希望がある場合に、速やかに評価を開始できる仕組み(実際には、未承認薬・適応外薬等検討会議の基準と同じく、英米独仏加豪)

施設

臨床研究中核病院(医療法で規定※)

患者申出療養の窓口のある特定機能病院(厚生労働省令に定める)

身近な協力医療機関(前例のある場合)

※臨床研究中核病院では、特定臨床研究(厚生労働省令で定める基準に従って行う研究)

対象医療機関

現在応募で4施設承認

施設基準

検討中

臨床研究中核病院等と同水準の国際医療機関

療養経緯

患者申出

対象医療機関の希望

保険外費用

おそらく患者負担

詳細不明だがおそらく患者負担

審査

初回は6週間(厚労省)

前例は、臨床研究中核病院で2週間

先進医療技術審査部会と先進医療会議の合同審査で迅速化

 
このように表示すると、消費者からすれば患者申出と医療機関希望により未承認薬の使用経緯が異なるだけで大きな差は見られません。いずれにしても、長年患者の希望がかなえられなかった日本版コンパッショネートユースの制度が実質出来上がったわけです。未承認薬は、自己輸入、治験、先進医療、患者申出療養、医療戦略特区で実施などのパターンに分かれ患者負担もそれぞれ異なることになります、省令等明確にならないと具体的費用負担はわからない状況です。
 
保険外併用療養費制度が利用されるのは、以下のパターンになります。
 評価療養、選定療養、患者申出療養、医療特区(先進利用の例外)
 
表示すると以下のような項目分類になると予想されます。

保険外併用療養の適用になる療養費

  1. 評価療養

    • 先進医療

      • 先進医療A

      • 先進医療B(旧来)

      • 先進医療B(医療特区))

    • その他

  2. 選定療養

  3. 患者申出療養

 

新しい商品化、特に抗がん剤費用を保障する商品を設計するには、これらの療養の理解が重要になるでしょう。