17)医療制度に関する合意形成の概要

  医療に関する各種制度の新設、改変、更新などの審議をしている場が、行政には多数存在しています。具体的には医療保険制度、医療サービス提供体制、診療報酬とその分配などについて協議されています。しかし、一体どのような審議会で何が議論されているのかその概要を正確にかつ整理して理解している方は、専門家を除くと数少ないのが現状でしょう。今回は、その点について解説してみましょう。

社会保障制度改革国民会議:

これは、野田政権が消費税率アップの法案と並行して社会保障制度改革推進法案が成立し、平成24年8月22日に施行されています。国民会議では、同法の成立趣旨に合わせ、公的年金制度、医療保険制度、介護保険制度の制度改革と少子化対策の実現のための具体的法制度を立案する会議です。したがって、医療保険制度について議論されます。会議体は法律施行1年の期限付きで、野田政権時に先送りされた社会保障・税一体改革の中身を民自公による3党協議に基づき審議することになっています。

 医療に関しては、健康増進促進と医療資源の確保と有効活用、公的健康保険の財政基盤の安定化と国民負担の公平性確保、保険給付の対象となる療養の範囲、医療における患者の尊厳確保、高齢者医療保険制度改革が主要な協議内容となっています。

社会保障審議会:

社会保障審議会令に基づき厚生労働省の管轄下に設置されている会議体で、医療供給体制、医療保険制度、介護保険制度等について審議する各種分科会や部会の親審議会です。

中央社会保険医療協議会:

社会保険医療協議会法に基づき、医療保険制度や診療報酬を審議する。

社会保障審議会医療分科会:

医療法の規定を主に審議する。医療法は、医療サービス提供体制のあり方と医療機関等の設置に関する規定が法制化されたもの。

社会保障審議会医療部会:

医療供給体制の観点から医療の確保の調査・審議を行う会議体

社会保障審議会医療保険部会:

医療経済あるいは医療保険財政の観点から調査・審議を行う会議体

 以上が医療に関する各種制度について審議する会議体になります。凡その各会議体の役割が理解できたと思います。

規制改革会議:

医療制度には各種の規制が存在していますが、上記の会議体で必要があれば規制等の見直しが審議されています。一方、内閣府に規制改革会議が設置されています。これは内閣府設置法第37条第2項に基づき設置された審議会です。医療に関しても必要があれば各種の提言を内閣総理大臣に対して行うことになります。これまでも、混合診療の拡大等について審議されています。

 

 以上が主要な会議体ですので、審議内容については医療や民間の保険を考える上で常にウォッチしなくてはなりません。以下に重要なウォッチすべきポイントについてまとめてみましょう。

医療供給体制の審議:

消費者の視点で関心のある病院等のサービスのあり方は、主に医療法に反映されますので、社会保障審議会や社会保障審議会医療分科会の審議内容が重要になります。今後の病床制度や医療機関の機能分化などが議論されることになります。

診療報酬の決審議:

同様に、患者負担の根源である診療報酬については、全体の総枠である改定率は、内閣の決定事項となっています。つまり厚生労働省の管轄にはありません。一方、改定の基本方針は社会保障審議会で、診療報酬の分配については中央社会保険医療協議会で審議されます。

 

 今回は触れませんでしたが、医薬品や医療機器に関する諸制度を審議する会議体は、別にありますので、別の項目で解説いたします。