10)外来診療報酬の包括支払

  DPC方式(Diagnosis procedure combination)という入院診療に対する診療報酬の包括支払については、別の項目で説明していますが、基本的に病名・病状と診療行為の組合せで医療サービスの基本部分について入院一日当たり定額で支払う方式です。従って、病院は、どのような投薬や処置をしても受け取れる診療報酬は定額です。勿論、一部の医療サービスは出来高算定できるようになっていますが、入院における医療サービスは、出来高から包括方式へ移行しつつあり、医療資源の効率運用と医療財政へのプラス効果で、普及が進んでします。一方、外来診療は病院も診療所も出来高で診療報酬が支払われます。出来高だけで経営を営んでいる開業医にとっては、この部分の支払い方式の変更は死活問題になります。いまのところ外来の患者は、診療報酬の原則30%の支払で医療サービスを受けられますので、患者の負担と出来高算定の医療機関の収入はリンクすることになります。しかし、外来診療における医療サービスの効率化や医療資源の適正利用の面で入院と比較すると課題が残っている状態です。そこで、外来診療についても医療機関への支払を包括方式にする案が、検討の俎上に上がっています。まだ本格論議には至っていませんが、基本的に単月ごとのレセプト(個人別の診療報酬明細)で出来高の算定がされていますが、これを定額にする方式です。既に、英国やドイツで導入されています。医療機関は、患者に提供した医療サービスによらず、患者数によって給付額が決まります。英国は、若干異なるのですが住民はそれぞれホームドクターに登録をします。開業医はGP(gerenal practioner)と呼ばれ登録されている住民数で収入が決まります。ドイツは診療した患者数で決まります。従って、医療サービスの量と収入が分離できているので、外来診療に対する患者の自己負担とも分離が可能になっています。因みに英国では、患者負担はありません。

  英国やドイツの方式がベストであるとは思われませんが、外来における包括方式導入は、行政にとっても関心のあるところになっています。しかし、簡単に導入できるわけではありません。今以上に開業医の質のレベルアップ、開業医の診療の透明化、公的健康保険の特長であるフリーアクセスとの調整など解決しなければならない課題が山積みです。そこで、最近よく目にする「総合医」議論が登場してくるわけです。英国のように診療科目別の専門医と家庭医であるGPのように、診療科目別の専門医の登録を厳格化し、開業医をプライマリー診療の専門医として登録する制度です。現在は、全ての診療科目の専門医制度の見直し議論の中で検討されていますが、総合医の制度が導入できれば総合医を地域住民診療のゲートキーパーとして位置づけることになるものと推測されています。その議論の先には、外来診療の包括支払方式も見え隠れしているわけです。その時点で外来における患者の自己負担がどのように見直しがあるのか、新たに制度設計が必要になるはずです。

  民間保険会社は、入院保障と共に外来診療の医療費保障を通院給付の形で提供いていますが、将来の外来診療の支払方式の動向を総合医問題の動向と合わせてウォッチしておくべきでしょう。