1 ) 公的健康保険の免責導入

日本は、医療保険においても国民皆保険が実現しています。患者視点での公的健康保険の特長は、フリーアクセス(基本的にどの医療機関にも受診可能)、一定水準の医療の提供(診療報酬点数表収載医療の提供、薬価基準収載の薬剤給付)、一定価格の医療の提供の3つです。国は、この3点のサービスを定率の患者負担で提供しています。

また日本の医療保険は、一部を除いて現物給付です。

具体的には、以下の表の内容の給付です。

現物給付項目

内容

診察

 

薬剤の給付

 

保険医療材料の支給

手術縫合糸、カテーテル等

入院

看護ケア等

入院時の食事

入院時食事療養費と入院時生活療養費

必要な医療

検査、手術、リハビリ等

大きく6種類の給付が現物給付の対象です。

対象外は、業務上災害、正常妊娠、健康診断、美容医療けんか・犯罪等故意の事故などです。したがって、これらの例外を除くと原則すべての疾病・傷害が給付対象となっています。

皆さん、ご存知のとおり医療財政が逼迫する中で公的健康保険も、これまでの給付原則を維持できるか微妙になってきています。そこで、検討されるのが公的健康保険の免責議論です。過去何回か行政で議論されたことがありましたが、患者の定率負担増加が優先され患者負担は3割になりました。3割負担になったことにより、米国を除くと患者の自己負担額が先進国の中では高くなってしまったのが日本なのです。しかし、患者の定率負担は限界ですから、これ以上の負担増の政策は困難です。したがって、公的健康保険を維持するためには免責が議論されるわけです。患者の受診抑制や受診時定額負担など形を変えて議論されてきました。特に薬剤の処方日数の制限緩和やスイッチOTC薬の増加はある意味、公的健康保険の免責導入という解釈もできます。

さて、免責議論ですが、免責にする基準は医療費の多寡、傷病の重症度、医療技術の難易度など様々ですが、風邪や花粉症など軽微な疾患を免責とする軸、診療報酬点数などを参考に低い点数のものを免責にするなどが考えられます。また表に示した現物給付の範囲を縮小し、現在以上に食事の給付を減じる、あるいは薬剤の給付を対象外にするなどの免責議論が具体化するはずです。いずれにせよ正面から免責を議論することは患者の切捨て論争となり国民的なコンセンサスを得るのは難題といえますが、必ず中医協等で議論されるはずですので、注視していかなくてはならないでしょう。別の項目で説明しますが、特に薬剤給付について現在世界的に議論になっているところです。