見えない保険料競争

  保険を加入する際に当然考えるのは、加入意向に合った商品内容かどうか、家計に合った保険料かどうかです。更に大事なのは、自分に合った加入経路を選ぶ事です。通販やインナーネットで加入する、銀行の窓口や郵便局で加入する、旧来の営業職員や代理店から加入する、町の中の保険ショップへ出向いて加入するなど様々です。あなたが、信頼する保険会社を選び、すでに加入したい会社の商品があるなら、その保険会社のショップや通販で加入すれば問題ないでしょう。

  一方、最近問題になっているのは複数の会社の複数の商品を販売している代理店や保険ショップでの加入です。保険各社は消費者に対して

 ①商品内容の充実度

 ②保険料(営業保険料:消費者が実際に支払う保険料)の安さ

代理店や募集人に対して

 ③手数料

という3点で競争をしています。当然、代理店に自社の保険を販売してもらいたいために他社よりも有利な条件の手数料を提示することになります。問題は、この部分の競争が全く消費者に見えないことです。代理店や募集人からすると消費者の加入意向とは乖離して手数料の高さで消費者に商品を勧誘するという問題があり金融庁でも規制について協議されているところです。代理店や募集人は、保険を1件販売すればできるだけ一度に、かつ早期に多額の手数料が欲しいのが当然です。一方手数料は一般に一回目手数料と2回目以降の継続手数料に分かれます。2回目以降の継続手数料は、保険の継続を前提として支払われる期間が予め設定されています。

  一般に1回目手数料が高く、継続部分は少額や2回目以降の手数料支払いの期間が短い場合は、問題が指摘されています。保険会社は、自社にロイヤリティの少ない代理店のつなぎとめのために初回の手数料を高額にして支払い、継続部分は安くしています。その結果代理店や募集人がその後の契約のフォローを十分に行うかどうかが問題になってしまいます。つまり、このような手数料体系に依存する代理店は、保険会社を渡り歩いたり、消費者のための視点を欠いていることがままあるのです。

  しかし、加入する際の担当の代理店や募集人がどのような手数料を得ているのかは公開されていません。消費者保護の観点からは、手数料体系の公開は今後の重要な課題となるはずです。そうなれば、代理店の手数料体系を消費者が審判することになり、代理店に有利な手数料が必ずしも販売につながらなくなる可能性がもたらされるでしょう。営業の世界が激変する可能性があるのです。

  最後になりますが、営業の世界の競争は、商品内容と保険料の高低および手数料の多寡の3者です。消費者に見えない手数料の競争があるということを消費者も知っておく必要があるでしょう。