乗合代理店について

保険の募集は、旧来の日本社を中心に、営業職員制度が採用されてきましたが、中小の生保や外資系の生保あるいは損保系の生保では、代理店制度が採用されていることが多いです。営業職員制度は、1社専属です。すなわち、所属している会社から給与を受け取る代わりに、所属している会社の商品や事務取扱について精通しています。会社も営業職員に対して全国一律の教育指導も行いやすくなっています。

 一方、代理店は保険会社と代理店契約を結び、給与ではなく募集による手数料を受け取っています。代理店の形態としては、大きな企業の子会社として設立されているケース、個人代理店から法人化した代理店、生損保兼営の代理店など様々です。営業職員制度と異なり1社専属ではありません。代理店ながら扱うのは1社の商品だけ取り扱う専業代理店と複数の会社の商品を取り扱う乗合代理店があります。また最近では、金融機関の窓口販売や通販に加え、ネットによる保険販売など保険募集の様態(募集チャネル)も多様化してきています。

以上をまとめますと、次のとおりになります。

  営業職員

  代理店

    専業代理店

    乗合代理店

  金融機関窓口販売

  通販

  ネット

 さて、その中で最近問題になってきているのが、乗合代理店問題です。

複数の会社の商品を取り扱う代理店です。古くは、死亡保険はA社の商品、医療保険はB社の商品、年金保険はC社の商品というように商品種類ごとに扱う保険会社を選定していて、取り扱う会社の数も限定されていました。しかし、最近は乗合代理店のなかに規模が大きくなり、同じ種類の商品でも多数の会社の商品を同時に取り扱う会社が出現しています。乗合代理店問題は、そのような規模の大きな代理店の問題です。

 保険会社は、行政から指導監督を受けています。これはすべて消費者を保護し、保険会社の健全性を保つためです。しかし、このような規模の大きな代理店は、一般の代理店と同じく保険会社から指導監督を受けることになるのですが、営業規模が大きいほど指導がしづらくなる構図が存在します。成績をあげる代理店に指導がしづらいのが実情です。その点を懸念して、最近の金融庁の金融審議会でも下記のポイントについて乗合代理店問題が取り上げられています。

 ・きちんとして商品説明がされているのか、

 ・消費者保護が確保されているのか、

 ・代理店手数料が高い商品だけ販売していないか

このような課題に対して金融庁は本腰を上げて指導と規制を行うことを公表しています。大手の乗合代理店に影響する制度変更になるでしょう。代理店にとっては、激震ですが、消費者にとっては健全な募集が確保されることになるという構図です。結局、金融庁の指導規制対象が、保険会社中心であった体制から募集量の大きい乗合代理店にまで保険会社と同様の対象とする規制です。

金融庁の平成27年2月のパブリックコメント募集内容

金融庁では、平成26年改正保険業法(2年以内施行)に係る政府令・監督指針案を以下のとおり取りまとめましたので、公表します。

○ 本件で公表する政府令・監督指針案の概要

1.保険業法施行令の改正

「保険募集人の関係者(業務委託先等)」に対する検査権限等について、財務(支)局長に委任する。

2.保険業法施行規則及び保険会社向けの総合的な監督指針の改正

(1)情報提供義務の導入に伴う規定の整備

商品情報など、顧客が保険加入の適否を判断するに当たって必要な事項を、保険募集に際し、顧客に情報提供すべき事項として規定する。

複数保険会社の商品から比較推奨して販売する場合、上記に加え、「比較可能な商品の概要」、「特定の商品の比較推奨を行う理由」について、情報提供を求める旨を規定する。

(2)意向把握義務の導入に伴う規定の整備

保険商品や募集実態に応じた各保険募集人の意向把握を求めるため、具体的な意向把握のプロセスを例示する。

(3)保険募集人に対する体制整備義務の導入に伴う規定の整備

保険会社による教育・管理・指導に加えて、保険募集人自身が、その業務を適切に行うため、自ら整備すべき体制を規定する。

(4)その他

「保険募集の意義」及び「募集関連行為」について明確化する

電話による保険募集に係る監督上の留意点を規定する

など、所要の改正を行う。

なお、少額短期保険業者向けの監督指針に係る改正案については、保険会社向けの総合的な監督指針の改正後に追って公表を行う予定です。