告知義務違反で契約解除と言われたら

告知義務とは、保険法という法律にも契約の約款にも記載があります。保険会社が為した告知質問に対して正当に回答しなければなりません。これに対して、重大な過失や故意に不実な告知を為した場合は、告知義務違反に問われます。

したがって、契約解除の通知を受けた場合には、保険会社の主張と告知義務違反の根拠を確認してみましょう。以下にそのポイントを示してみましょう。

1)契約解除の文書の内容を十分吟味してみましょう。

(ア)解除の根拠が、妥当かつ十分か。つまり、告知義務違反をした根拠の証明は保険会社の責任になっています。通常は、保険会社が調査を行いますので、違法な調査に基づく主張はできません。(根拠の存在)

①保険会社が、きちんと違反を証明したのか

(イ)告知していない事実があっても、重大な過失や故意によって告知されなかったことが証明されなければなりません。(重大な過失や故意性の存在)

①告知しなかったが、告知書の質問自体に問題がある。あるいは、告知しなかったが当然の理由があった場合は、重大な過失や故意の告知義務違反にはなりません。

 

>>たとえば、咳が出るので医療機関を受診しましたが、風邪だろうと説明を受け、風邪薬をもらった。その後、保険の申し込みをしたが、咳について受療の事実を告知しなかった。その後、肺がん診断で保険請求したが解除の通知を受けた。この場合は、風邪は医学の素人でも保険の給付に影響しない事実なので、告知しなくともよいと考え告知を省略することがあります。したがって、保険会社は告知義務違反で解除することはしてはなりません。

2)募集経緯の確認

(ア)  募集人に不当な行為は無かったのか記憶を呼び起こしてみましょう。募集人が、正当な告知を妨げたり、告知しないように勧めたりした場合は、保険会社は解除することはできません。しかし、単に募集人には事実を告げていたと主張しても解除を阻止できません。生命保険会社の募集人は、契約の取次ぎをするだけの資格しかないからです。但し、契約申し込みの際の診査における診察をした医師に対して事実を告げていた場合は、解除はできません。医師は、取次ぎ者ではなく告知を受領する資格があるからです。

(イ)  複数の事実の一部について募集人による告知妨害があった場合は、告知妨害された事実とされたなった事実について分けて考えなければなりません。つまりAという事実は、告知しようと思ったが募集人の告知妨害により告知しなかった。しかし、Bという事実は募集人に何も告げていない。つまりBという事実については告知義務違反となり、これにより契約は解除となります。

3)解除のプロセス確認

(ア)  保険会社が、解除の根拠となる事実をいつ知ったのかを確認しましょう。約款をよく見てみると、告知義務違反があっても保険会社が、その事実を知って1ヶ月以内に解除の通知をしなければ解除できないとあるのです。したがって、告知義務違反では色々調査が実施されますが、いつの時点で告知義務違反の事実を保険会社知りえたのかが、ポイントになります。告知義務違反を確認できていないのに解除の通知を出したり、告知義務の事実を知っても長期に放置して1ヶ月間解除の通知を出さなかったりすると解除できないのです。

(イ)  査定基準の確認をしてみましょう。告知に該当する事実は多種多様です。お客様が告知される内容も、したがって様々ですので保険会社の内部には査定標準が用意されています。通常、非公開でありまた開示請求しても保険会社は開示しなくてよい資料に位置づけられています。しかし、解除の通知に納得できない場合は、裁判やADRという裁判外紛争解決手続きの中で確認することができます。告知義務違反は間違いないが、その事実を告知されていても保険引き受けに影響しないような事実であれば、告知義務違反を主張することに意義はありません。要するに、告知していても告知が無くても引受け審査に影響しない事実では、解除の主張は異味が無いのです。また、告知義務違反の判明した時点で、すでに保険引受けに関係するようなリスクが軽減してしまった場合には、解除ではなくて契約を継続してもらう可能性もあるのです。

4)告知の大前提の確認

(ア) 知らないことに対して、告知義務は生じない

①幼子を養子縁組し、親として契約者になり告知もした。しかし、養子縁組する前の子供の受療事実や病歴は知らないばあい。

(イ) 出生前の受療事実は、告知の質問対象外

① 妊娠中に胎児の異常を指摘されていた。保険加入に際して告知すべき事実は出産後の事実に対して回答すればよいのです。産後医師から何も指摘されていないのであれば告知の対象になりません。

以上が、ポイントの概略です。保険契約に関して不慣れな弁護士に相談しても上記のポイントについて妥当な判断をしてもらえないことがありますので、以上のポイントを弁護士においても確認されているのか、自らチェックする必要はあるでしょう。