加入審査のための基準

死亡保険も医療保険やがん保険も、それぞれの保険種類ごとに加入者に発生するかもしれない医学的リスク、環境的リスク、道徳的リスクを審査して契約の引き受け判断を行います。

 医学的リスクは、審査のために入手された情報(多くは告知情報と医師による診査情報など)を基に判断されます。環境的リスクは、収入や就業状態と加入申し込みの保険金給付金額などの情報を個別に審査することになっています。また反社会的な団体に所属していることやその他の道徳的リスクのある場合には、加入をお断りすることになります。

 このような審査については、それぞれ査定標準(基準)が、用意されています。当然のことながら、説明責任や公平性の観点から査定標準は科学的な判断を基に作成されている必要があります。医学的リスクに関する査定標準は、会社内の医師の意見を参考にしたり、再保険会社の査定基準を参考に作成されています。やや専門的になりますが、保険医学や約款および保険料の仕組みに関する知識が必要となりますので、医学的リスクに対する標準は、臨床の医師に作成することはできません。

 さて、これらの査定標準は開示請求しても公開しなくてよい情報として位置づけられています。その理由としては、情報を無制限に公開すると、情報を悪用して不正に加入される方が増えるからです。したがって、保険会社は査定標準の開示をしない代わりに「引き受け目安」を提供しています。査定標準と異なり、よくみられる疾病の一定範囲の病状について加入できる可能性について情報を提供しています。これにより、加入できないことが分かっている方の申し込みを防止できるメリットがあります。

 なお、査定標準は公開しないという業界の原則がありましたが、最近保険加入を巡る審査のトレンドとして、なるべく分かりやすい加入審査を目指して、査定標準を告知書に公開する「事前選択方式の告知書」を採用する会社が出現しています。すなわち、告知書に質問として

①加入できない疾病や病状を列挙して、その疾病の既往について確認する

②加入できる疾病や病状を列挙して、その疾病の既往について確認する

という告知書です。①に該当すると謝絶、②に該当する場合は加入承諾となるわけです。これにより保険会社の査定のプロセスの前に事前に加入の判断が可能となるという、これまでになかった告知書で「事前選択方式の告知書」と呼ばれています。