不慮の事故と感染症

 災害を原因として発生した死亡や傷害に対して保険金や給付金をお支払いする商品が提供されています。主に

 死亡保険金を上乗せして支払う災害割増特約

 災害による身体の傷害に対して給付される傷害特約

 災害による入院に対して給付される災害に入院特約

で、一括して災害関係特約と呼ばれている商品です。

また、一部の商品では、不慮の事故により一定の身体傷害になると保険料の支払いが免除になる保険料払込免除規定があります。原因によって支払われる保険金額が異なるのですから、不慮の事故が原因かどうかは消費者にとって切実な問題です。ですから、どのような事故が不慮の事故として約款上災害に認定されるかという重要なので解説してみましょう。

 事故には様々な形態があるので、約款に簡単な文章で定義することは困難なのですが、基本的に急激性・偶発性・外来性の3条件が揃う事が、不慮の事故の保険約款上の認定基準となっています。しかし、これだけでは余計に分かりにくいため、各社で3条件について説明を加えていますが、1990年代に生命保険協会で不慮の事故約款の修正について協議された内容を基本的に各社踏襲しています。

 しかし、実際には外観上不慮の事故に思えることは多く、自傷行為、精神障害による事故あるいは泥酔による事故などは免責となっています。また、多くの会社は約款の最後に対象となる事故を列挙した別表を補足して掲載してきました。それぞれの事故について約款上給付対象とするのか免責とするのかを列挙して表示しているのです。特に注目すべきは、別表の中に医療事故は不慮の事故として認定せずに免責になることが示されています。外科手術などある意味医療行為は人体を傷害しないと成立しません。したがって、約款上は不慮の事故の対象外となっているのです。

 最近では、このような別表の記載が分かりづらいとの批判があり、行政の指導もあって別表を削除し約款の主文に説明を加える会社が増えてきています。しかし、不慮の事故の条件は急激性・偶発性・外来性の3条件が基本です。

 さて、このように、分かりやすい約款が浸透してきていますが、課題が外来性の部分に残っています。心筋梗塞の発作が自動車運転中に発生し、壁に激突して死亡あるいは傷害を受傷した場合の問題です。心臓発作という内因の事象と壁に激突し受傷という外因の事象が複合している場合にどのように約款上外来性を判断すればよいのかという点です。少し専門的ですが内因と外因の併存や競合と言った事象で、どちらの事象を優先するのかと言う問題です。

 次に不慮の事故と感染症の関係を説明しましょう。感染症は、風邪やインフルエンザが代表で罹患するれば約款上は疾病の扱いです。急激性・偶発性・外来性の条件に照らして感染症に罹患しても不慮の事故には認定されないのが当然です。とことが、短期間で死亡し、致死率が高く、通常の生活ではどのように注意してもリスク回避が困難な重篤な感染症があります。現在「感染症予防及び感染症患者に対する医療に関する法律(感染症予防法)」という法律があります。この法律では感染症は、一類、二類、三類、四類、五類、新型インフルエンザ、指定感染症および新感染症というように分類されています。この中で一類、二類や三類感染症は一般消費者からすると感染症ではありますが、あたかも不慮の事故に遭遇した状況と類似しています。会社により感染症の種類や給付の範囲はことなりますが、災害関係約款を不慮の事故と同等に感染症に対して支払うことにしています。

 ところが、約款に感染症予防法の一類感染症と記載されていても消費者には全くどの感染症が対象かわかりません。そもそも法律文は、目にしにくいものです。そのため、行政の指導もあり災害関係特約等で不慮の事故に準じた扱いをする感染症については、具体的感染症名を列挙表示することに修正されました。

例えば、「エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、・・・・・・・」という表記です。列挙されている疾病名は、会社により異なります。