見えない商品開発の動向

生命保険業界は護送船団方式で運営されていた時期がありました。会社が異なっていても基本的に販売している商品もほぼ同一でした。つまり業界に統一約款があったのです。死亡保険も疾病入院特約、災害入院特約、災害割増特約、傷害特約などが統一商品として販売されてきました。しかし、護送船団方式が現在ではなくなり会社ごとに商品を販売することになり徐々に約款も会社によって差異が認められるようになってきています。

現在も古い時代の統一約款である商品も販売されていますが、統一約款ではなく生命保険協会モデル約款と称されています。モデル約款が出揃ったのは昭和62年ですが、その後一定期間販売されていたので、消費者にも馴染みがあったのです。

しかし、最近これらのモデル約款に関して各社が独自に改定を試みています。中には消費者に有利な改定もみられますが、不利な改定もみられるのです。

 

○自殺免責の期間変更

1年間から2~3年間へ延長(契約後1年すれば自殺しても死亡保険金が支払われたのに、現在は2から3年しないと支払われないという消費者に不利な改定です。)

○責任開始の規定変更

告知時期か初回保険料入金時期のどちらか遅い時期を責任開始期としていましたが、入金が無くても告知されていれば、告知の時期から責任開始が始まるという規定に変更された商品が販売され始めています。これは消費者に有利な改定です。

○入院保険の通算規定の変更

同一疾病単位の通算方式から、異なる疾病の合算で通算する方式に改定(従来は、リウマチで60日間入院、退院後180日以内に再度リウマチで入院開始し70日間入院した場合、60+70=130日となり一入院の通算が120日保障される商品では10日が打ち切りとなり不払いとなります。一方、異なる疾病も合算する場合には、リウマチの2回の入院の間に胆石で40日入院があった場合には、60+40+70=170日で打ち切りは50日となります。明らかに消費者にとって不利益改定となっています。)

○放射線治療の規定改定

従来手術給付金の対象として放射線治療が給付対象となっていました。これは、手術の代替療法として放射線治療が位置づけられていたためです。給付の条件には照射量が50グレイ以上および新生物の治療に限定されていました。最近50グレイの規定と新生物に限定の規定をなくした商品も販売されてきています。これは消費者に有利な規定改定です。

○三大疾病保障保険

ご存知のとおりがん、脳卒中、心筋梗塞に罹患すると一時金が出る保険ですが、ただし脳卒中は60日経過した時点で後遺症があること、心筋梗塞は60日経過した時点で就業制限がある場合に支払われます。しかし、最近このような60日経過時点の病状と関係なく病気に罹っただけで支払われる保険が販売されています。これに合わせて保険料も調整されていますので一概に消費者に有利な改定か不明ですが、規定だけ考えると消費者有利な改定になっています。