多くの生命保険契約には、リビングニーズ特約が付加されています。これは、元々終末期医療に係わる治療費用の補てん、あるいは生活の質を確保するための費用保障として保険金の前払い制度です。重要なのは、消費者もその制度と特約の存在意義を正確に認識することです。
1)生命予後の確認について
医療の現場で生命予後の判定をすることは、なかなか難しくよほど終末期を迎えていないと正確には判定できません。病気の診断をしても予後の判定は、医師も避けて通ることが多いのが現実ですし、余命の告知をすることも限られています。たとえば、がんの進行度によって余命が異なることは、よく知られていますが、あくまで集団に対して観察した結果であり、目の前の患者には個別性に配慮するべき多様な病状と病態が控えているため容易には判定を下すことはありません。ただし、業界のデータではリビングニーズ特約の保険金支払いを受けた方の多くが余命1年以内に収束していることが知られています。
2)余命確認方法
支払い基準は6ヶ月の余命ですが、生命保険会社ごとに判定の確認法方法が異なっています。余命の判定は医師によるものであることは、共通ですが
●医師の診断書による場合
●医師の意見書による場合
の大きく2方法があります。前者は診断書ですから医師の余命に関する証明責任が重くなりますので、医師から診断書記載を拒否されることがあります。後者はより医師の責任は軽く意見書記入はしやすいと判断されます。
また会社によっては、どのような場合を6ヶ月の余命判断とするのか提示した上で意見書や診断書を記載していただくような方法をとっている会社もあり、親切な対応と言えるでしょう。このように保険会社は、余命判断を医師が回答しやすいように工夫する必要があるでしょう。
3)移植とリビングニーズ特約給付について
臓器移植法が整備されつつありますが、いまだに臓器移植の待機者は多く存在しています。残念ながら移植治療を待つ中で不幸な転帰となる方もいらっしゃいます。さて、移植医療待つ間の状況はリビングニーズ特約に該当するでしょうか。この点については生命保険会社各社で統一されていません。加入時に各社に確認してみるとよいでしょう。
腎臓移植
肝臓移植
心臓移植
肺臓移植
すい臓
小腸移植
角膜移植
などが対象です。通常、心臓や肺移植が予定されている場合には、移植が実現されなければ生命予後は不良です。移植されたら予後6ヶ月以上となるのでリビングニーズ特約の保険金は支払えないという仮定の話でリビングニーズ特約を不払いにするというわけにはいかないと考えます。
一方、腎臓に関しては移植ができなくても人工透析により延命は可能です。角膜移植では移植できなければ両眼失明の危険はあるのですが、糖尿病が原因となる場合などを除いて死亡の危険はなく多くの場合生命予後には影響しません。このように臓器移植といっても概に論じることはできません。
実は、リビングニーズ特約が日本に導入された時期に、旧大蔵省が特約の認可をする上で最も問題にしたのは移植待機と余命判断でした。生命保険加入に際しては、支払いのスタンスについて確認してみてもよいかもしれません。