商品の良否の見分け方

ファイナンシャルプランナーの方々は当然ですが、最近では経済誌まで保険商品比較をした情報を公開し、場合によってはランキング付けまでされていることがあります。
この中でよく指標にもちいられるのは、
 ①保険料の高低
 ②保障の広さ、充実度
 ③販売している会社の財務状況、会社の健全性
となっています。
保険商品を用いて資産形成を考えるときには、
 ④運用率(予定利率や戻り率:解約した時点の払い込み保険料総額と解約した際に支払われる解約返戻金の比率)も指標に取り入れられます。会社などの法人が、契約者になり従業員を加入させる場合は、重要な指標になります。
 一方、消費者は、これらの指標以外にテレビコマーシャルなどで親しみやすい会社、安心できる会社を選ばれているようです。以前のように営業職員のGNP(義理・人情・プレゼント)だけで保険加入を決めていた時代とは大きく異なってきています。したがって、これらの指標を巡って保険会社は、熾烈な競争を行っています。どこの業界も同様かもしれませんが、第三者の目から見ると、過当競争になっているように見えるかもしれません。
 一方、抜け落ちている指標があります。これが、
 ⑤適正な危険選択ができる会社の商品かどうか
という指標です。ご存知のとおり数年前、マスコミを賑わした不適切支払の問題もありました。適正な危険選択については、別の項目で取り上げますが、適正な保険募集、適正な保険引受、適正な保険金支払のすべてが含まれています。しかし、残念ながら一流経済誌の方も、ファイナンシャルプランナーの方にも、その点の情報把握は充分ではありません。多くは会社の内部情報になるから仕方が無いことです。ましてや、一般の消費者にとっては、全く見えない、知らされない部分です。その点を含めて、商品の見分け方を解説してみましょう。

(1)死亡保険の見分け方

死亡したら保険金が支払われる単純な商品ですから、保障の充実度という指標②の点ではほとんど各社で差はありません。しかし、死亡保障と比較して少額の特約や第三分野保障(入院特約など)の充実度を謳ってセットで死亡保障の加入が勧められることもままありますが、きちんと死亡保障の内容確認が重要です。
死亡保障を主力に販売している会社では、新しい契約をどんどん獲得しないと経営に影響が出るという収益の構造上問題があります。要するに、新しい契約を獲得できないと自転車操業状態になる会社があるわけです。このため、過剰な新契約獲得競争になりがちです。消費者に少しでも接点を増やす運動(ご契約者訪問活動)を展開されているのもその現れの側面もあります。
逆に、会社を選ぶ指標の一つに死亡保障の新契約率(過去1年間に販売した件数と保有している契約数の比率あるいは、件数でなく保険金額に換算した比率もある)というものもあります。新契約の比率が高いことは過度な競争に打ち勝っているのか、消費者から選ばれやすい会社なのか、収益の構造上比較的健全な会社なのか、などの評価となります。現在では、各社から四半期ごとに業績結果が公開されていますから、簡単にこのような指標を確認することができるでしょう。ただし、新規に参入された会社は、新契約率が高くなっているのは当然です。
さて、指標③の財務状況や④の運用部分は、ここでの解説は省きますが、死亡保険のみならず保険商品の見分け方の重要部分は、実は保険料の中身を知ることが重要です。特に死亡保険は保険料が高額であるため重要な指標となります。
保険料のうちわけの簡単な解説は別の項目で行いますが、保険料のうち、付加保険料(契約を維持管理するための費用)は、商品認可の中で自由化されています。

さて、保険料の高低比較は単純なものではありません。比較する上での注意点を列挙してみます。
a)保障期間が短ければ安いのは当然、期間経過後の更新の仕組みと保険料も知る必要がある
b)加入年齢が若ければ安いのは当然、年齢相応の保険金額に加入できても更新後の保険料が高くなる
c)転換制度という複雑な制度を利用した上で安い保険料を提示されていることもあり、充分制度の理解が必要になります。転換制度については別の項目で解説します。
d)人件費を節減して安い保険料の提示が適正な危険選択の支障になっていないかです。例えば、保険金殺人や虐待死を考えてみましょう。その契約に係わる人が、多いほど不正契約であることを見抜く機会は増えますが、人件費を削った結果、保険の加入を容易にすればするほど、保険金殺人や虐待死につながる契約を引受してしまうリスクが高くなるわけです。したがって、付加保険料にも当然コストがかかって当たり前ですし、会社の健全性にもつながります。

(2)第三分野商品(医療保険、がん保険、生活習慣病保障など)の見分け方

第三分野商品は、死亡保険が第一分野で、損害保険が第二分野となり、それ以外の人の疾病・傷害を保障する部分の商品が新しく法律(保険法)で規定されました。正式には、傷害疾病定額保険です。
死亡保険と異なり、第三分野の商品は、多種多様な商品が各社から販売されています。したがって、単純比較はできません。また、商品の給付では、人の生老病死のすべてに関係し、医学的な判断も必要になる場合があります。

総論的に商品を見分けるポイントを解説してみました。
a)約款がわかりやすいか、契約のしおり(約款の解説部分)がわかりやすいか
b)どのような場合に給付されるのか、消費者として理解できるのか
c)その分野の商品について経験が豊富な会社か
d)保障の医学的内容を保険の募集人がきちんと説明できるのか
e)募集人が説明できるように、どれだけ募集人の教育が実施されている会社なのか
f)パンフ、テレビ等の宣伝から見た会社の誠実さ(不安を煽り立てるCM、誇大表示はないか)

保険商品は、見える形の商品は存在しません。一方、第三分野商品は、溢れかえる状態で商品の質が問われています。勿論その商品を販売している会社の姿勢も問われています。
一時期、流行した商品のひとつですが、宣伝文句に日本初の商品とありました。内容を専門家としての目で見てみましたが、粗悪商品の典型でした。
わかり易く述べますと、入院保険では、入院すると給付金がもらえます、勿論入院した事実は患者本人もわかります。本人に意識が無い場合でも、患者の家族はわかるので、保険給付金の請求(指定代理請求制度)が行われます。一方、問題の商品では、患者本人、家族、保険給付金の受取人(一般的には患者本人)あるいは主治医のいずれも、保険金の請求ができる状態になったのか判断(専門的には保険事故の発生の認識)できません。これでは、保障に加入したはずなのに保障が受けられないわけです。つまり問題の本質は約款のわかりにくさがあったためです。
保険会社には、耳が痛いかもしれませんが、過度な宣伝、過大な数字の羅列で不安先導ビジネスを展開していないか、パンフの医学的解説は医学の専門家(眼科の病気は整形外科の医師には判断できないように、保険商品の良否は、残念ながら臨床の医師では判断できません。保険制度や約款を熟知している保険医学の専門家のことを意味しています)の検証を受けているかが問われています。パンフレットに記載された医学的記述や解説が誤っていることもしばしば目にします。
会社が間違っていれば、保険の募集人が誤った説明をして商品販売するのは、当然です。
したがって、かならずパンフレットは保険証券と一緒に保管しておきましょう。
パンフレットには、よく治療費の数字やグラフが掲載されています。きちんと公的統計や公的統計に準じたデータが使用されているのか、出典が明示されているかも重要なポイントです。

消費者の不安を掻き立てるような治療費に関する過大な表示がされていないかもポイントです。よくある例では、先進医療(評価療養医療の一類型)を保障する商品が販売されていますが、粒子線や重粒子線治療(技術料が約300万年)の例しか表示しないていないことも目にします。実際の先進医療は数千円の自己負担しかない医療も含まれています。先進医療すべてが粒子線治療のような高額医療と誤解させるようなことはあってはなりません。(粒子線治療の問題は別の項目で解説します)。

第三分野の商品を販売する募集人についてはどうでしょうか。差額ベッド代の説明しかせずに、先進医療といえば重粒子線の説明しかできないようでは困ります。先進医療や評価療養の制度についてきちんと募集人が説明できるのか、制度の背景も説明できるのかといった点も募集人や販売会社を選ぶ指標として重要です。

最近メタボ検診もあって生活習慣病は、大流行です。保険会社も右へ倣えで、三大生活習慣病保障に始まり6大、7大といった保障する疾病の多さを競争していることも目にしますが、そもそも三大以外の生活習慣病を保障しなければならないのでしょうか。多くの生活習慣病は、通院はあっても高額の費用負担はないはずです。あまりに過大な宣伝も問題でしょう。生活習慣病の多くが、高血圧と糖尿病ですが、悪化して入院になるのは、その合併症です。つまり合併症の多くは、脳卒中や心臓病です。3大疾病でこれらの合併症は、保障されています。

以上のように約款のわかりやすさ、商品のわかりやすさ、募集資材が適正に記述されているのか、募集人への医学教育がきちんと実施されているのかなど確認してみましょう。

なお、第三分野商品は、病気や身体の障害を保障することが多いため、後日保険給付の際のトラブルを避けるために、やむを得ず病気の定義や障害の定義が約款上必要になることがあります。入院だけ保障するなら入院の定義は簡単でわかりやすいので問題ありませんが、特定の疾病だけを保障したり、特定の治療だけ保障するとなれば、医学の素人の消費者にとってなじみの無い定義が必要になることはやむを得ません。したがって、消費者からすれば、その点をできるだけ契約のしおりなどでわかり易く説明しようとしているか、会社へ問い合わせをした際に答えてもらえるのかが重要になります。いまや、医療も多様化しており、単純に入院だけを保障しているのでは消費者のニーズに答えられなくなってきているのも事実です。

以上のポイントを参考にしながら保険選びの参考にしていただければ幸いです。